【ニュース】派遣切りの孤独な新年 大阪の寒空、帰省もできず雑煮も

【MSN産経ニュース】生活 > トレンド・話題 - 2009.01.04
派遣切りの孤独な新年 大阪の寒空、帰省もできず雑煮もなく
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090104/trd0901040127001-n1.htm

 ふるさとなどからのUターンラッシュが始まった3日、大阪市北区扇町公園では、「派遣切り」などで仕事を失い、帰省したくてもできない人たちが炊き出しを求めて長い列を作った。身を包む孤独感で自殺を考えた人、除夜の鐘を耳にしながら、ひとり夜の街を徘徊(はいかい)した人…。膨らむ家族への思いをじっと耐える人々の心を一時(いっとき)癒やした炊き出し、それは、お雑煮でもおせち料理でもなく、彼らの栄養を最大限に考えた中華丼と野菜サラダだった。
 「健康保険証もないので今後、病気にならないか不安で不安で…」
 寒空の下、背筋を丸めながら、力なくこう語ったのは、堺市派遣労働者として自動車部品の検品をしていた男性(33)。年もおし迫った先月15日、突然派遣契約を打ち切られ、クリスマスには3カ月分の家賃を滞納していたアパートから追い出された。
 その夜、実家に「今年は帰れへん」と電話した。「忙しいんか」と息子の身を案じ尋ねる母親に、「そうや」とだけ答えた。翌日、母親とつなぐ携帯電話の契約も切れた。
 行くあてもなく、マンガ喫茶やネットカフェで夜を過ごした。3万円ほどあった所持金は29日には1万円を切り、路上生活を余儀なくされた。
 大みそか大阪市の地下鉄天下茶屋駅周辺を徘徊していたという。人出が多く、駅で寝るのは恥ずかしかったからだ。「早く夜が明けてくれ」と願いながらひたすら歩き続けた。
 途中、前年の大みそかのことが頭をよぎった。恋人と友人ら4人で出かけた伊勢神宮への初詣で。そこで見た、まばゆい初日の出が忘れられないという。あれから、わずか1年。「(今年の元日は)陽が昇ったことさえ気付かなかった。まさに天国と地獄です」
 たどり着いた西成区の公園で、ベンチにあった新聞を手にした。扇町公園で炊き出しをおこなっていることを伝える記事が目に飛び込んだ。迷うことなく地下鉄に乗って同公園へ。所持金は1000円を切っていた。
 そしてすぐに、ボランティア団体が設営したテント暮らしが始まった。しかし、そのテントも5日朝に撤収される。
 「早く仕事を見つけて、母親に元気な声を聞かせたい」。視線は遠くに向けられていた。
 扇町公園には先月下旬に建設業の仕事を解雇されたという男性(30)の姿もあった。
 「大阪なら何とかなるだろう」と大みそかに神戸からやってきた。だが、仕事は見つからず、若者らでにぎわう道頓堀に歩き着いた。将来への不安に押しつぶされそうになりながら、グリコのネオン看板をぼんやり眺めていると、新年を迎えるカウントダウンが始まった。
 「5、4、3、2、1!」。着飾った同世代のカップルらが楽しそうにはしゃぐ姿をみて急に孤独感に襲われた。「もう死のうかな」。故郷の宮崎を思い、涙がこぼれたという。